赤外線リモコン(NECフォーマット)
赤外線リモコンの通信フォーマットの一つである「NECフォーマット」と、赤外線信号が解析できる多機能テスター「LCR-TC1」を紹介します。
赤外線リモコン(NECフォーマット)
テレビやエアコンなどの家電製品を無線で遠隔操作する仕組みとして、赤外線リモコンがよく使われています。これらの赤外線リモコンは、900nm帯の赤外線をキャリア(搬送波)として使用するもので、その通信フォーマットには、NEC・SONY・AEHA(家電協)などがあります。NECフォーマットは、最初に規格化されたフォーマットで、現在でも多く利用されています。
キャリア(搬送波)とサブキャリア(副搬送波)
NECフォーマットでは、主に940nmの赤外線をキャリア、周波数38kHz・デューティー比1/3の信号をサブキャリア(副搬送波)として用います。これにより、キャリアである940nmの赤外線が、38kHz(周期26.3μ秒)で点滅します。デューティー比とは、一周期のうち赤外線が点灯している時間の割合のことです。デューティー比が3分の1なので、点灯時間は8.79μ秒となります。残りの17.51μ秒は消えています。(下図の右側)
Carrier Waveform
REJ05B0777-0100/Rev.1.00(Page 2 of 46)
後述するフレームやリピートと呼ばれる赤外線信号(infrared signal)をもとに、赤外線が点滅している時間帯(赤外線信号がHのとき)と完全に消えている時間帯(赤外線信号がLのとき)を制御すること(これを変調という)で、目的とする情報を送信側(赤外線リモコン)から受信側(テレビやエアコンなど)へ送ります。(上図の左側)
フレーム
NECフォーマットでは、送信できる情報として、16bitのカスタムコード(メーカー識別コード)と、8bitのデーターコードがあります。これらの情報を含む赤外線信号をフレームといい、開始を示すリーダーコード・カスタムコード・データーコード・終了を示すストップビットで構成されます。データーコードは、8bitの送信データー(データーコード1)に、ビット反転したもの(データーコード2)を付加して、合計16bitとなります。
初期の仕様では、カスタムコードもデータコード同様に8bit+8bit反転でしたが、拡張されて16bitとなり、表現できる値が「0x00~0xFF」から「0x0000~0xFFFF」へ増えました。
リピート
リピートは、繰り返しを意味するもので、赤外線リモコンのボリュームボタンなどを押しっぱなしにしているときに送出される赤外線信号です。リーダーコードとストップビットのみで構成されています。フレームに続いて、108m秒の周期で送出します。(図1-1の左下)
ビットデーター(1・0)の表現方法
カスタムコードとデーターコードに含まれるビットデーター(1・0)は、信号の長さによって表現されます。信号の長さが2.25m秒で先頭の0.56m秒がHの場合は「1」、同様に長さが1.125m秒の場合は「0」を表します。(図1-1の右下)
赤外線信号を見る
変調された赤外線を元に戻すこと(これを復調という)で、赤外線信号に含まれるカスタムコードとデーターコードを見ることができます。便利なのが赤外線信号の解析ができる多機能テスターです。本記事で紹介する「LCR-TC1」は、抵抗・トランジスター・ダイオードなどの容量や特性を自動で計測できる機能に加えて、赤外線信号(NECフォーマット)の解析機能が付いています。
操作はいたって簡単。Startボタンで電源をオンにした後、IR受信部に向けて赤外線リモコンを操作するだけ。メニュー選択などは不要です。画面右上に解析状況を示す●印が表示され、赤外線受信中は赤色、解析が成功すると青色になります。NECフォーマット以外の場合は、赤色のままです。●印はすぐに消えるので注意深く観察しましょう。
解析が成功すると、画面上に「UserCode」と「DataCode」が表示されます。それぞれカスタムコードとデーターコードとなります。
赤外線リモコン(東芝製)の電源ボタンを押した結果ですが、カスタムコードが「0x40BF」、データコードが「0x12ED」であることがわかります。いずれの値も8bit+8bit反転(0x40+0xBF、0x12+0xED)となっています。