抵抗器
電子工作で最もよく使われる部品の一つ「抵抗器」を紹介します。
2-2-1.抵抗器の役割
抵抗器は、電子工作で最もよく使われる部品の一つです。抵抗器は、電子回路の「電気の流れを妨げる」役割があり、その流れにくさを表した値を「抵抗値」または「抵抗」といいます。抵抗の単位はΩ(オーム)で、数値が大きいほど電気が流れにくくなります。ここでは、抵抗値が決まった値を持つ固定抵抗器について紹介します。
抵抗器を用いる目的の一つが、電子回路の電流(電気の流れる量)を必要な値に調整することです。抵抗器と直列に接続された他の部品に流れる電流を調整することができます。また、別の目的として、抵抗器に流れる電流を調整することで、抵抗に比例した電圧を発生させることができます。もう少し詳しい内容は第1章 電子工作の基本で解説しています。
2-2-2.抵抗器の種類(構造の違い)
電子工作でよく使われる抵抗器に「炭素皮膜抵抗器」と「金属被膜抵抗器」があります。
炭素皮膜抵抗器は、セラミック棒に炭素皮膜を形成した後、らせん状に溝を切ることで目的の抵抗値にしたものです。カーボン抵抗とも呼ばれ、最も汎用的で安価な抵抗器です。一般的な誤差は±5%程度、定格電力(ワット数)は1/4W(0.25W)・1/2W(0.5W)・1Wなどです。電子工作で、単に抵抗器(または抵抗)というと、このカーボン抵抗を指すことが一般的です。
金属被膜抵抗器は、セラミック棒にニッケルクロム合金などの金属被膜を形成した後、らせん状に溝を切ることで目的の抵抗値にしたものです。キンピ抵抗とも呼ばれ、熱による抵抗値の変化が少なく、オーディオなど高い精度が必要な電子回路に使用されます。一般的な誤差は±1%程度、定格電力(ワット数)は1/4W(0.25W)・1/2W(0.5W)1Wなどです。さらに高い精度が必要な場合、誤差±0.1%・±0.05%といったものもあります。
他にも、数ワット程度の中電力用に「酸化金属被膜抵抗器」、より大きな電力用に「巻線抵抗器」などがあります。
2-2-3.抵抗値の謎(E系列)
電流制限など、さまざまな目的で用いられる抵抗器ですが、決まった値を持つ固定抵抗器では、どのような抵抗値のものが用意(販売)されているのでしょうか。
1Ωずつ増やしてみる
例えば、抵抗値が1Ωから10,000Ωまでの抵抗器を考えてみます。すべての抵抗値が1Ω単位で用意されていたらどうでしょうか。少し想像してみましょう。1Ω・2Ω・3Ω・4Ω・5Ω・・・・10Ω・11Ω・12Ω・・・99Ω・100Ω・101Ω・・・999Ω・1,000Ω・1,001Ω・・・9,998Ω・9,999Ω・10,000Ω・・・当然ですが10,000種類の抵抗器が必要になりますね。抵抗値はまだまだ大きな値のものがあります。これでは、売り手(作る人)も買い手(使う人)も具合が悪そうですね。困りました。本当にこんなに多くの種類が必要なのでしょうか。
抵抗値には誤差がある
前項「2-2-2.抵抗器の種類(構造の違い)」を思い出してください。抵抗値には誤差がありました。カーボン抵抗の一般的な誤差は±5%です。では「誤差がある」とはどういう意味でしょうか。
表示上の抵抗値が1,000Ωの抵抗器を考えてみましょう。この抵抗器で、誤差が±5%の場合、許容される実抵抗値は1,000Ω±50Ω、950Ω~1,050Ωの範囲になります。つまり、950Ωから1,050Ωまでの抵抗値すべてを用意しなくても、表示上の抵抗値が1,000Ωの抵抗器で代替できるということになります。このように、誤差を許容した抵抗器の場合、実抵抗値に幅(誤差の許容範囲)ができることから、表示上の抵抗値を1Ωずつ増やした抵抗器をすべて用意すると、実抵抗値の幅が多く重複することになります。これでは無駄ですね。では、どうすれば重複がなくなるのでしょうか。
等比数列
実は、この誤差による重複は簡単に取り除けます。それが「等比数列」です。先ほどの例では、隣り合った抵抗値の差(この場合は1Ω)が等しい「等差数列」によって並んでいました。この差を10Ωや100Ωにしても、抵抗値が大きくなれば重複は取り除けず、逆に欲しい小さな抵抗値が得られなくなります。
そこで、等しい差ではなく、等しい比で抵抗値を並べる「等比数列」を考えます。誤差が、±5%の場合、隣り合った抵抗値の幅を考慮すると、抵抗値の誤差(+側)の2倍(10%)程度距離を開けて次の抵抗値を決めると、重複が解消されそうです。
では、表示上の抵抗値が1,000Ωの抵抗器を考えてみましょう。1,000Ωの抵抗値の誤差(+側)は50Ωです。その2倍の距離を開けて次の抵抗値を決めると、1,100Ωになります。1,000Ωの抵抗器の実抵抗値は950Ω~1,050Ω、1,100Ωは1,045Ω~1,155Ωです。ほぼ、重複が解消されました。他の抵抗値の組み合わせでも、同じ結果になるので試してみてください。
このように、誤差が±5%の場合、10%増しで抵抗値を並べると重複がほぼなくなります。どうやら、隣り合った抵抗値の比が1.1(110%)の「等比数列」で並べるとよさそうです。ちなみに、この比のことを等比数列の「公比」といいます。
実際の抵抗値
公比が1.1の等比数列で並べると、重複の範囲がほぼなくなることがわかりました。では、実際の抵抗値はどのように決められているのでしょうか。
誤差が±5%の抵抗器をみてみましょう。誤差が±5%の場合、実際の抵抗値は、公比が24√10の等比数列によって並んでいます。24√10とは、24乗するとちょうど10になる値で、24√10=1.1006941・・・となります。余談ですが、Excelでこの値を求めるには、「=10^(1/24)」と入力します。
表2-2-3-1が、誤差±5%の抵抗器に用意された実際の抵抗値です。抵抗値は、公比が24√10の等比数列によって求められた値を、丸めた数値となっています。この抵抗値を「E24系列」と呼んでいます。
1.0 | 10 | 100 |
1.1 | 11 | 110 |
1.2 | 12 | 120 |
1.3 | 13 | 130 |
1.5 | 15 | 150 |
1.6 | 16 | 160 |
1.8 | 18 | 180 |
2.0 | 20 | 200 |
2.2 | 22 | 220 |
2.4 | 24 | 240 |
2.7 | 27 | 270 |
3.0 | 30 | 300 |
3.3 | 33 | 330 |
3.6 | 36 | 360 |
3.9 | 39 | 390 |
4.3 | 43 | 430 |
4.7 | 47 | 470 |
5.1 | 51 | 510 |
5.6 | 56 | 560 |
6.2 | 62 | 620 |
6.8 | 68 | 680 |
7.5 | 75 | 750 |
8.2 | 82 | 820 |
9.1 | 91 | 910 |
同様に、誤差が±10%の抵抗器は公比が12√10(=1.2115276・・・)の等比数列、誤差が±20%の抵抗器は公比が6√10(=1.4677992・・・)の等比数列となります。それぞれを「E12系列」「E6系列」と呼びます。
1.0 | 10 | 100 |
1.2 | 12 | 120 |
1.5 | 15 | 150 |
1.8 | 18 | 180 |
2.2 | 22 | 220 |
2.7 | 27 | 270 |
3.3 | 33 | 330 |
3.9 | 39 | 390 |
4.7 | 47 | 470 |
5.6 | 56 | 560 |
6.8 | 68 | 680 |
8.2 | 82 | 820 |
1.0 | 10 | 100 |
1.5 | 15 | 150 |
2.2 | 22 | 220 |
3.3 | 33 | 330 |
4.7 | 47 | 470 |
6.8 | 68 | 680 |
タイトルに挙げた「抵抗値の謎」とは「なぜ、抵抗値は中途半端に感じられる値なのか」という疑問で、その答えは「誤差を考慮して、等比数列によって求められた値」ということになります。
2-2-4.カラーコード
図2-2-4-1は、E24系列の抵抗器の外観です。このように、抵抗器には色の付いた帯が描かれており、E24系列では合計4本の色帯があります。この図では、左から黄・紫・橙・金となります。この色帯をカラーコードといい、抵抗値と誤差を表しています。E12系列やE24系列では4本帯、精度が高いE96系列やE192系列では、有効数字の桁数が多いため5本帯となります。ここでは、よく使われる4本帯について解説します。
図2-2-4-2の赤い枠で囲まれた色帯が誤差を表しています。金色のものは誤差が±5%、銀色のものは±10%です。図のように、この誤差の色帯が右側になるようにして、残りの抵抗値を読み取ります。
図2-2-4-3の赤い枠で囲まれた2カ所の色帯が抵抗値を表しています。2本の色帯が「2桁の有効数字」、1本の色帯が「乗数」です。「抵抗値=2桁の有効数字×乗数」で求められます。ただし、これを読み取るには、表2-2-4-1のカラーコードが必要になります。
まず、2桁の有効数字は「黄・紫」なので「47」になります。続いて、乗数は「橙」なので「103」となります。これにより、抵抗値は「47×103=47,000(Ω)=47k(Ω)」となります。
色 | 数字 | 乗数 |
---|---|---|
黒 | 0 | 100 |
茶 | 1 | 101 |
赤 | 2 | 102 |
橙 | 3 | 103 |
黄 | 4 | 104 |
緑 | 5 | 105 |
青 | 6 | 106 |
紫 | 7 | 107 |
灰 | 8 | |
白 | 9 | |
金 | 10-1 | |
銀 | 10-2 |
この抵抗器は、誤差が±5%、抵抗値が47kΩということがわかります。
最後に、このカラーコードを語呂合わせで覚える方法を紹介します。
色 | 数字 | 語呂合わせ |
---|---|---|
黒 | 0 | 黒い礼服 |
茶 | 1 | お茶を一杯 小林一茶 |
赤 | 2 | 赤い人参 |
橙 | 3 | 第三者 |
黄 | 4 | 岸惠子 |
緑 | 5 | 五月みどり 緑はゴー |
青 | 6 | 青二才のろくでなし |
紫 | 7 | 紫式部 |
灰 | 8 | ハイヤー |
白 | 9 | ホワイトクリスマス 釧路 |
2-2-5.定格電力(ワット数)
抵抗器には、抵抗値・誤差の他に、大切な項目として「定格電力」があります。抵抗器に電気を流すと、その両端に電圧が発生するので、抵抗器により電気エネルギーが消費されます。この消費される電気エネルギーを「消費電力」とい、抵抗器の場合、その電気エネルギーは熱となります。消費電力が大きすぎると高温になり、抵抗器が焼き切れる原因となります。そのため、超えてはならない定格電力が定められています。消費電力は、次の式で求められます。
消費電力(W)=電圧(V)×電流(A)
定格電力は、1/4W(0.25W)・1/2W(0.5W)・1Wのようにワット数で表されます。抵抗器を使う目安として、消費電力が定格電力の半分を超えないように、電子回路を設計します。このような基準を、ディレーティングといい、部品を壊さないように使用する安全基準となります。
2-2-6.抵抗器関連のおすすめ品
電子工作で、よく使いそうな抵抗値20種類をまとめたキットです。カラーコード表も付属し、これから電子工作を始めるにはおすすめです。
LEDを点灯する・トランジスターでLEDを点灯する・明るさセンサーでLEDを点灯する・明るさセンサーにキャンドルICを連動させてLEDを点灯するなど実験が行えます。LEDを安全に点灯させる電流制限用として抵抗器が使用されています。
サンハヤト 小型ブレッドボードパーツセット SBS-201 暗くなると自動点滅するLEDキャンドル
ブレッドボードに部品を挿し込むだけで、ハンダ付けをすることなく電子工作が楽しめます。わかりやすい取扱説明書付き。
抵抗器などの電子部品の知識・回路の設計方法・自作のノウハウ・実際の製作例などが紹介された一冊です。
とにかく何かが作りたいけど、何から始めたらいいかわからないという人に向けた一冊。抵抗器などの部品の説明から工具の紹介、実用的な電子工作物を紹介しています。はじめの一歩はLEDの点灯で、電流制限に必要な抵抗値を求める方法が詳しく説明されています。
抵抗器はもちろん、コンデンサー・コイル・ダイオード・トランジスター・集積回路・入出力部品など、電子工作に必要な部品について詳しく紹介した一冊です。