開発の流れ
PICマイコンを使った装置の製作(開発)フローの一例を紹介します。
2-1-1.PICマイコンを使った開発の流れ
PICマイコンを使った装置の製作(開発)フローは、人によってそれぞれあります。ここでは、その一例として、作るものを考えるところから完成までの流れを紹介します。
作るものを考える
「何か」を作ろうをした時点で、その「何か」のアイデアがすでに頭の中にあると思います。より良くするために不便さを補うもの、個人的な興味や探究心の追求によって作られるもの、友人や知人からの依頼、実用的なものから実験的なものまで、ものを作る理由や動機はさまざまですが、それがものづくりの第一歩です。Lチカ(LEDをチカチカさせる装置)・ロボット制御など、作りたいものがぼんやりでも頭の中にあれば、このステップは完了です。
仕様を決める
このステップでは、頭の中でぼんやりと思い描いていたイメージを具体化して、作ろうとする装置の振る舞いや実装する機能を洗い出します。これらには、操作方法や表示器への表示内容などユーザーインターフェースの定義・サーバーへのデーター送信などの外部との通信手順なども含まれます。また、期待する性能や能力・装置を使用する環境についても考慮します。これが、装置の仕様となります。ここで注意が必要なのは、このステップで洗い出すのは振る舞いや機能であって、使用する具体的なPICマイコンや部品などの型番や製品名ではないということです。
例えば、Lチカであれば、使用するLEDの数や色、LEDを点灯させるのか点滅させるのか、スイッチを付けるかどうか、装置を携帯するなら電源をどうするかなどを決めます。また、ロボットなどでは、フレームやシャーシ・駆動系などのメカ部において、必要な大きさや強度なども決定します。
洗い出しが終わったら、システム構成をブロック図で示したり、構成要素ごとに振る舞いや機能を記述した資料を作成しておきましょう。
ハードウェアを設計する
このステップでは、仕様に基づいて、具体的なPICマイコンや必要な部品などの選定を行い、回路図を作成します。PICマイコンの選定には、必要な入出力ピンの数・使用する周辺モジュール・動作周波数・メモリーの大きさなどを考慮して決定します。同様に、電源回路・周辺回路などに必要な部品を選定します。選定したPICマイコンや部品は、その型番や製品名と共に規格を一覧表にまとめましょう。
これらのPICマイコンや部品などは、入手性の良いものを選定しておくのがいいでしょう。
ソフトウェアを設計する
このステップでは、仕様に基づいて、プログラムを機能ごとにモジュール分割(細分化)しながら、全体像を作り上げます。各モジュールの果たすべき役割として、処理内容だけでなく、ハードウェアとの入出力・他のモジュールとのインターフェースなども定義します。また、使用するフレームワークやライブラリーなどの検討も行いましょう。また、RTOS(リアルタイムOS)の検討も必要かもしれません。
また、PICマイコンでは、コンフィギュレーションの値を決定します。コンフィギュレーションとは、PICマイコンごとに用意されている基本的な動作を決めるものです。例えば、クロック発信器の設定やメモリー保護の有無などです。さらに、一つのピンに複数に機能を持ったものがあるので、あらかじめ使用する機能を決めておきます。
全モジュールのフローと各モジュールの詳細な処理内容を記述した資料を作成しておきましょう。
製作する
ハードウェアの設計に基づいて、回路・メカ部などを装置を製作します。ソフトウェアの設計に基づいて、プログラミングを行い、PICマイコンへの書き込みを行います。動作確認(デバッグ)を行い、仕様を満たすように実装します。実装においては、装置の規模により、機能ごとに製作・動作確認を行う単体テストも考慮します。
試験する
最終試験です。仕様通りの機能を実装しているのはもちろん、想定した環境下での使用を確認します。
完成
嬉しい瞬間です。頭の中にあったぼんやりとしたものが、かたちになりました。実際に使ってみましょう。SNSにアップするのもいいかもしれませんね。
PICマイコンを使った装置の製作(開発)フローを紹介しましたが、その工程は人によってそれぞれです。店頭やネット通販で、思わず衝動買いしたPICマイコンやおもしろうそうなパーツを使いたくて、「作る何か」を探すなんてこともあります。完成してみれば、当初のアイデアと違っていた、なんてことも。いいんです、ものづくりはその工程も楽しいのですから。
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