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micro:bit Lab.【マイクロビット】

micro:bit Lab.では、micro:bit【マイクロビット】に関する情報を紹介しています。

小学校のプログラミング教育に採り入れる魅力
8-4

micro:bitをすすめる理由

2018-11-112018-12-07

サヌキテックネットでは、小学校のプログラミング教育に活用できるコンピューターとして、すでに授業で使用している教材(例えば、豆電球やプロペラ付きのモーターなど)と組み合わせて使えるmicro:bit(マイクロビット)をおすすめします。ここでは、micro:bitを小学校のプログラミング教育に採り入れる魅力について紹介します。

8-4-1.micro:bitとは

micro:bit(マイクロビット)と読みます。micro:bitは、教育用として開発された小型のコンピューターボードで、国内では2,000円程度(税別)で入手することができます。

図8-4-1-1.micro:bitの外観
図8-4-1-1.micro:bitの外観

その大きさは、Suicaなどの交通系ICカードより小さく、およそ4cm×5cmです。これは、単三形乾電池三本をならべた大きさとほぼ同じです。

図8-4-1-2.単三形乾電池とほぼ同じ大きさ
図8-4-1-2.単三形乾電池三本とほぼ同じ大きさ

BBC主体による開発

micro:bitは、2016年にイギリスの公共放送局であるBBC(英国放送協会/British Broadcasting Corporation)が中心となって開発した教育用のコンピューターボードで、正式名称を「BBC micro:bit(ビービーシーマイクロビット)」といいます。公共放送局がコンピューターを開発した、と聞くと不思議に感じられるかもしれませんが、BBCでは1980年代にも、子ども達のコンピューターリテラシー向上を目的としたプロジェクトを立ち上げ、BBC Microという教育用パソコンを市場に投入しています。BBC micro:bitは、その未来の形というわけです。

100万台の無料配布

BBCでは、micro:bitを一般向けの販売ではなく、まずイギリス国内の教育機関へ向けて無料配布することに注力しました。その規模は、なんと100万台。イギリスの11才~12才(日本の小学校5年生・6年生)のすべての児童に配布し、世界の注目を集めました。

micro:bit教育財団の設立

その後、世界中に普及させることを目的として非営利団体(NPO)で扱うことが決まり、2016年10月、micro:bit教育財団が設立されました。財団の設立後、1年足らずで40カ国に普及させました。この記事の執筆時点では、すでに50以上の国で普及し、micro:bitのウェブサイトは17カ国語で見ることができます。

日本への上陸

2017年8月、micro:bitが日本へ上陸し、ウェブサイトとプログラミング環境が日本語に対応しました。

8-4-2.プログラミング教育に採り入れる魅力

プログラミング教育のねらい

小学校に導入されるプログラミング教育のねらいは、次の3つです。詳しい内容は「8-1.プログラミング教育導入の目的」「8-2.プログラミング教育のねらい」をご覧ください。

  • プログラミング的思考の育成
  • 論理的思考力を育むとともに、プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付き、身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むこと
  • 教科等で学ぶ知識及び技能等をより確実に身に付けさせること

micro:bitをプログラミング教育に取り入れることで、これら3つのねらいをどこまで達成できるかが重要なポイントとなります。では、micro:bitをプログラミング教育に採り入れる魅力について見てみましょう。

micro:bitをプログラミング教育に採り入れる魅力

micro:bitは、教育用に開発されたコンピューターボードです。micro:bitを、小学校におけるプログラミング教育に採り入れる魅力はどこにあるのでしょうか。その魅力のひとつとして「micro:bitを使えば、プログラミングによって、現実世界のものを動かすことができる」ということ、そして「そのために必要なセンサーが、あらかじめ搭載されている」という点が挙げられます。

具体的な例を見てみましょう。図8-4-2-1は、小学校の授業で使われる豆電球の実験を行う教材です。スイッチを入れると、電気の流れる通り道(回路)がつながり、豆電球が点灯します。これは、小学校3年生で学習する理科の単元「電気の通り道」の内容です。

図8-4-2-1.豆電球の実験を行う教材
図8-4-2-1.豆電球の実験を行う教材

では、この教材にmicro:bitを採り入れてみましょう。スイッチの部分をmicro:bit(+プログラム制御スイッチ)に置き換えます。これだけで、プログラミングによって、豆電球を点けたり消したりできる装置が完成します。さらに、この装置を使って、豆電球を点灯・消灯させるだけでなく、好きな間隔で点滅させたり、micro:bitにあらかじめ搭載されている明るさセンサーを使って、暗くなったら自動で点灯する自動車のライトのような動きをプログラミングすることができます。(※プログラミングやセンサーについては後述します。)

図8-4-2-2.micro:bitで豆電球を制御する
図8-4-2-2.micro:bitで豆電球を制御する

図8-4-2-3は、豆電球をプロペラ付きのモーターに置き換えた例です。こちらは、プログラミングによって、プロペラ(モーター)を回したり止めたりできる装置です。さらに、回転速度を調節したり、micro:bitにあらかじめ内蔵されている温度センサーを使って、暑くなったら自動で回転をはじめる扇風機のような動きをプログラミングすることができます。(※プログラミングやセンサーについては後述します。)

図8-4-2-3.micro:bitでモーターを制御する
図8-4-2-3.micro:bitでモーターを制御する

コンピューターの働きを直感的に理解する

いかがでしょうか。この例のように、すでにある教材と一緒にmicro:bitを使うことで、プログラミングによって、現実世界のものを動かすこと、すなわち「プログラミングによって、豆電球を点灯・消灯・点滅させること」や「プログラミングによって、プロペラ(モーター)を回転・停止・速度を調節すること」が簡単に実現できます。さらに、micro:bitにあらかじめ搭載されているセンサーを使って、発展的にプログラミングすることができます。

このように、既存のスイッチをmicro:bitに置き換えることで、子供たちにとってコンピューターの働きが直感的に理解できるのではないでしょうか。

プログラミング教育のねらいに合致

ここで使用した教材は、(形状はさまざまありますが)小学校の理科の学習に導入されているものです。これらの教材とmicro:bitを組み合わせてプログラミング学習を行うことは、プログラミング学習のねらいのひとつである「教科等で学ぶ知識及び技能等をより確実に身に付けさせること」につながります。

また「暗くなったら自動で点灯する自動車のライトのような動き」や「暑くなったら自動で回転をはじめる扇風機のような動き」をプログラミングで体験することは「私たちの日常生活のさまざまな場所でコンピューター(プログラム)が使われており、生活を便利にしていることに気づき、それを知ること」ができます。これも、プログラミング教育のねらいの一つです。自動車にコンピューターが搭載されていることを知れば、最新テクノロジーの自動ブレーキや自動運転にもプログラミングが深く関わっていることに興味を持つかもしれませんね。

教材を使うメリット

低価格なmicro:bitと、すでにある教材を使うことで導入にかかるコスト面においてもメリットがあるのではないでしょうか。

8-4-3.micro:bitのプログラミング

小学校におけるプログラミング教育は、プログラミング言語を覚えたり、プログラミングの高度なテクニックを身につけることが目的ではありません。ですから、プログラミング教育において、プログラミング環境を整えたり、プログラムを作ることのハードルは、できるだけ低いことが望まれます。

プログラミングに必要なもの

micro:bitのプログラミングには、パソコン(またはタブレット)が必要です。ここでは、パソコンでのプログラミングを前提に話を進めます。

パソコンへ特別なソフトウェア(アプリ)のインストールは不要です。プログラミングに必要となるのは、インターネットへアクセスできる環境とブラウザー、micro:bitとパソコンを接続するためのUSBケーブルです。

  • micro:bit本体
  • パソコン(インターネットへアクセスできる環境とブラウザー)
  • USBケーブル

プログラミング

では、プログラミングの具体的な操作を見てみましょう。まず、micro:bitとパソコンをUSBケーブルでつなぎます。次に、ブラウザーを起動して「Microsoft MakeCode for micro:bit」へアクセスします。プログラミングの開始地点となるホーム画面(図8-4-3-1)が表示されます。新しくプログラミングを始めるには、ホーム画面の「新しいプロジェクト」をクリックします。

図8-4-3-1.Microsoft MakeCode for micro:bitのホーム画面
図8-4-3-1.Microsoft MakeCode for micro:bitのホーム画面

プログラミングする画面(図8-4-3-2)が表示されます。この画面を「JavaScript(ジャバスクリプト)ブロックエディター」といいます。この画面について、少し解説します。

図8-4-3-2.JavaScriptブロックエディター
図8-4-3-2.JavaScriptブロックエディター

JavaScriptブロックエディターでは、その名の通り、さまざまな役割を持ったブロックが用意されており、それらのブロックをならべてプログラミングします。画面の右側がブロックをならべるところです。ここには、あらかじめ「最初だけ」と「ずっと」と書かれたブロックが表示されています。

図8-4-3-3.プログラミングするところ
図8-4-3-3.プログラミングするところ

プログラミングに使うブロックは、中央から選びます。

図8-4-3-4.ブロックを選ぶところ
図8-4-3-4.ブロックを選ぶところ

左側に表示されているmicro:bitは、プログラムの動きを確認するためのシミュレーターです。作ったプログラムの動作を、パソコンの画面上で確認することができます。

図8-4-3-5.シミュレーター
図8-4-3-5.シミュレーター

では、先ほど紹介した豆電球の教材を使って、豆電球を点滅させるプログラムを作ってみましょう。使うブロックは「デジタルで出力する」と「一時停止」の2種類。あらかじめ表示されていた「ずっと」というブロックの中に、合計4個のブロックを追加します。これだけで豆電球を点滅させるプログラムの完成です。

図8-4-3-6.豆電球を点滅させるプログラム
図8-4-3-6.豆電球を点滅させるプログラム

プログラムが完成したら、名前をつけて、保存ボタンをクリックします。プログラムファイルがダウンロードされるので、micro:bitへ書き込みます。

図8-4-3-7.プログラムのダウンロード
図8-4-3-7.プログラムのダウンロード

プログラムの書き込みが完了すると、豆電球が点滅を始めます。

いかがでしょうか。手元にmicro:bitがなくても、プログラミングして、その動作をシミュレーターで確認することができます。ぜひ「Microsoft MakeCode for micro:bit」へアクセスして、プログラミングを体験してください。なお、プログラミングに関する詳しい解説は「2-1.はじめてのプログラミング」をご覧ください。

micro:bitのプログラミングを体験すると、そのハードルの低さに驚かれると思います。一連の操作は、容易に習得することができるので、プログラミングそのものに無駄な時間をかけるのではなく、豆電球を点灯させたりプロペラを回転させるといった本来の目的に考える力を注ぐことができます。

8-4-4.micro:bitにできること

micro:bitの前面を見る

micro:bitは、最新技術によって、およそ4cm×5cmという小さなボディの中に、さまざまな機能が搭載されています。まずは、前面(図8-4-4-1)をご覧ください。中央に見える縦横5列に並んでいるのは、合計25個(5×5)の小さなLEDです。その両側には、A・Bと書かれた押しボタン式のスイッチが搭載されています。そして、手前に0・1・2・3V・GNDと書かれた金色に輝く部分があります。

図8-4-4-1.micro:bitの前面
図8-4-4-1.micro:bitの前面

25個(5×5)の小さなLED

中央にある25個(5×5)の小さなLEDを「LED画面」といい、点灯すると赤色に光ります。このLED画面には、プログラミングによって、文字や数字、ハートなどのアイコンを表示することができます。また、5マス×5マスの方眼紙を鉛筆で塗りつぶして絵を描くように、自由にアイコンを作ることもできます。

図8-4-4-2.micro:bitのLED画面
図8-4-4-2.micro:bitのLED画面

図8-4-4-3は、文字や数字、アイコンなどを表示するプログラム例です。

図8-4-4-3.LED画面に表示するプログラム例
図8-4-4-3.LED画面に表示するプログラム例

押しボタン式のスイッチ

LED画面の両側に、二つの押しボタン式スイッチがあります。左側を「ボタンA」、右側を「ボタンB」といいます。これらのボタンが押された時だけ、特別な動きをするようにプログラミングできます。

図8-4-4-4.micro:bitのボタンB
図8-4-4-4.micro:bitのボタンB

図8-4-4-5は、ボタンAが押された時にハート、ボタンBが押された時にドクロを表示するプログラム例です。

図8-4-4-5.ボタンが押された時のプログラム例
図8-4-4-5.ボタンが押された時のプログラム例

金色に輝く部分

手前にある金色に輝く部分は、外部の電子回路と接続するための端子です。この端子に、スピーカーをつないで音を出したり、教材と組み合わせるためにスイッチの役目をする部品を取り付けたりします。

図8-4-4-6.micro:bitの端子
図8-4-4-6.micro:bitの端子

図8-4-4-7は、ボタンAが押された時にピコーン!と音を鳴らすプログラム例です。

図8-4-4-7.ピコーン!と鳴らすプログラム例
図8-4-4-7.ピコーン!と鳴らすプログラム例

micro:bitの背面を見る

では、次にmicro:bitの背面を見てみましょう。micro:bitの背面は、家電製品などとは異なり保護ケースがなく、電子部品がむき出しになっています。これは、micro:bitの特徴のひとつで、電子部品の実装方法が見られるように、狙って設計されたものです。

図8-4-4-8.micro:bitの背面
図8-4-4-8.micro:bitの背面

このような電子部品を目にすることで、普段は気にしない家電製品やスマートフォンの中にも電子部品が入っていることに気付き、それらがプログラミングによって動作していることを知ることができるのではないでしょうか。

micro:bitに搭載されているセンサー

micro:bitには、小学校のプログラミング教育に活用できるセンサーがあらかじめ搭載されています。

  • 明るさセンサー
  • 温度センサー
  • コンパス(地磁気センサー)
  • 加速度センサー

例えば、明るさセンサーを使えば、暗くなったら自動で点灯する自動車のライトのような動きをプログラミングすることができます。また、温度センサーを使えば、暑くなったら自動で回転をはじめる扇風機のような動きをプログラミングすることができます。地磁気センサーで東西南北を知り、加速度センサーをでmicro:bitの傾きを知ることができます。

センサーは、私たちが安全で便利な生活をする上で欠かすことのできない存在です。あらゆる家電製品やスマートフォン、自動車などでとても多くのセンサーが活躍しています。普段目にすることがないセンサーを使ったプログラミングを体験することで、プログラミング教育のねらいである「私たちの生活がコンピューター等の情報技術によって支えられ、そのコンピューターがプログラムによって動いていることに気づき、それらを知ること」ができるのではないでしょうか。

もっと詳しく

その他にも、micro:bit同士で通信できる無線通信の機能など、その大きさからは想像できないほどの機能が盛り込まれています。詳しくは「第1章 micro:bit入門」をご覧ください。

8-4-5.プログラミング教育だけでは終わらない

小学校におけるプログラミング教育は、プログラミング言語を覚えたり、プログラミングの高度なテクニックを身につけることが目的ではありません。しかしながら、プログラミング教育をきっかけに「もっとプログラミング言語を学びたい、高度なテクニックを身につけたい」と思う子どもが出てくるはずです。そんな時、どうすればいいのでしょうか。

micro:bitなら心配ありません。micro:bitは、教育を目的としたものですが、一般に販売されているコンピューターボードです。先人達が、micro:bitの楽しい活用方法などをインターネット上に公開したり、micro:bitを対象とした書籍も数多く出版されています。

サヌキテックネットでも、micro:bitのプログラミングから電子工作まで「micro:bit Lab.【マイクロビット】」で幅広く紹介しています。

micro:bitなら、プログラミングに興味を持った子ども達が、家庭で、またCoderDojoのような子供のためのプログラミング道場で仲間と一緒に、より深く楽しみながらプログラミングを学ぶことができます。

8-4-6.最後に

「micro:bitをすすめる理由」と題して、小学校のプログラミング教育に採り入れる魅力を紹介しました。プログラミング教育は、多くの子ども達にとって、初めてプログラミングというものに触れる機会になるのではないでしょうか。

これは個人的な想いですが、プログラミング教育の中で、子ども達がプログラミングは楽しいものであると感じられるように願っています。コンピューターやプログラムの存在に気づくだけでも、世の中の見方が大きく変わるかもしれません。小学校へ導入されるプログラミング教育を入り口にして、より本格的に学びたいという子ども達が現れることを期待して。

記事中で紹介している豆電球やプロペラ(モーター)の教材とmicro:bitの組み合わせについて、具体的な方法は今後紹介していきます。

次は、小学校における電気の学習内容を中心にして、micro:bitをプログラミング教育に採り入れる魅力を探る「8-5.小学校で学ぶ電気とmicro:bit」です。ぜひ、こちらもご覧ください。

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