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新しい小学校学習指導要領から読み解く(1)
8-1

プログラミング教育導入の目的

2018-10-272019-10-12

2020年度から実施されるプログラミング教育について、その導入の目的を小学校学習指導要領(平成29年告示)・小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【総則編】・小学校プログラミング教育の手引(第一版)の三つの資料から読み解きます。

8-1-1.プログラミング教育導入の目的

2020年度から実施される新しい小学校学習指導要領では、教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成を考える中で「言語能力」「情報活用能力」「問題発見・解決能力」の三つを「学習の基盤となる資質・能力」と位置づけ、それらの育成を目指しています。小学校段階におけるプログラミング教育は、これら三つの資質・能力のうち「情報活用能力」の育成を目的とした教育活動の一つとして導入されます。

これらについて述べられている部分を、次の三つの資料から抜粋して、以下に引用します。

なお、これらはすべて、文部科学省のウェブサイト(http://www.mext.go.jp/)で公開されているものです。

「学習の基盤となる資質・能力」とは

「学習の基盤となる資質・能力」とは、どういったものなのでしょうか。小学校学習指導要領(平成29年告示)では、育成する資質・能力の一つである「学習の基盤となる資質・能力」について、次のように述べられています。

第1章 総則

第2 教育課程の編成

2 教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成

(1)各学校においては、児童の発達の段階を考慮し、言語能力、情報活用能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。

小学校学習指導要領(平成29年告示) (Page.19)

この中で「言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等の三つが、学習の基盤となる資質・能力として位置づけられ、これらを育成することができるように教育課程を編成する」とあります。では、プログラミング教育がその育成を目的の一つとする「情報活用能力」とは、どのように定義されているのでしょうか。

「情報活用能力」とは

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【総則編】では、学習の基盤となる資質・能力の一つである「情報活用能力」について、次のように解説しています。

第3章 教育課程の編成及び実施

第2節 教育課程の編成

2 教科等横断的な視点に立った資質・能力

(1) 学習の基盤となる資質・能力(第1章第2の2の(1))

イ 情報活用能力

情報活用能力は、世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉え、情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して、問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力である。将来の予測が難しい社会において、情報を主体的に捉えながら、何が重要かを主体的に考え、見いだした情報を活用しながら他者と協働し、新たな価値の創造に挑んでいくためには、情報活用能力の育成が重要となる。また、情報技術は人々の生活にますます身近なものとなっていくと考えられるが、そうした情報技術を手段として学習や日常生活に活用できるようにしていくことも重要となる。

情報活用能力をより具体的に捉えれば、学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得たり、情報を整理・比較したり、得られた情報を分かりやすく発信・伝達したり、必要に応じて保存・共有したりといったことができる力であり、さらに、このような学習活動を遂行する上で必要となる情報手段の基本的な操作の習得や、プログラミング的思考、情報モラル、情報セキュリティ、統計等に関する資質・能力等も含むものである。こうした情報活用能力は、各教科等の学びを支える基盤であり、これを確実に育んでいくためには、各教科等の特質に応じて適切な学習場面で育成を図ることが重要であるとともに、そうして育まれた情報活用能力を発揮させることにより、各教科等における主体的・対話的で深い学びへとつながっていくことが一層期待されるものである。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【総則編】 (Page.50-51)

この中で「情報活用能力」について「将来の予測が難しい社会において、情報を主体的に捉え、活用しながら他者と協業し、新たな価値の創造に挑むために情報活用能力の育成が重要である」とし、その育成には「各教科等の特質に応じて適切な学習場面で育成を図ることが重要である」とされています。

また、ここで登場する「プログラミング的思考」という言葉は、プログラミング教育を考える上で、とても重要なキーワードとなります。詳しくは後述します。

「情報活用能力の育成」とは

「情報活用能力の育成」について、もう少し詳しく見てみましょう。小学校学習指導要領(平成29年告示)では「情報活用能力の育成」について「各学校において情報技術を活用できる環境を整え、各教科の特質に応じて、情報技術を適切に活用した学習活動の充実を図ることが必要である」と述べられています。

第1章 総則

第3 教育課程の実施と学習評価

1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善

(3) 第2の2の(1)に示す情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること。また、各種の統計資料や新聞、視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。あわせて、各教科等の特質に応じて、次の学習活動を計画的に実施すること。

ア 児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動

イ 児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動

小学校学習指導要領(平成29年告示) (Page.22)

ここで、とりわけ重要なのは「児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」を「各教科等の特質に応じて、計画的に実施すること」と述べられている点です。

では、なぜ「プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動」を行うのでしょうか。これについて、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【総則編】では、次のように解説しています。

子供たちが将来どのような職業に就くとしても時代を越えて普遍的に求められる「プログラミング的思考」を育むため、小学校においては、児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動を計画的に実施する

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【総則編】 (Page.85)

つまり「プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動の計画的な実施は、プログラミング的思考を育むために行われるものであり、それは学習の基盤となる資質・能力の一つである情報活用能力の育成を図ることへ繋がる」と言えます。

プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動とは、いわゆるプログラミング教育であることから、すなわち「プログラミング教育は、プログラミング的思考を育み、情報活用能力を向上させることを目的として計画的に実施する」と言うことになるのではないでしょうか。

では、プログラミング教育によって育まれることが期待される「プログラミング的思考」とは、どのようなものなのでしょうか。

「プログラミング的思考」とは

「プログラミング的思考」について、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【総則編】では、次のように解説しています。

「プログラミング的思考」(自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力)

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【総則編】 (Page.85)

「プログラミング的思考」は比較的新しい言葉なので、この解説だけで概念を理解するのは難しいかもしれません。言葉は新しいですが「プログラミング的思考」そのものは、我々が日常的に行っていることなので、簡単な例に置き換えて考えてみましょう。

・・・目覚まし時計に起こされ、眠たい目をこすりながらベッドから出るあなたは「温かい朝食が食べたい。メニューはトースト、目玉焼き、サラダ、オレンジジュースにしよう!」と考えています。この欲求を満たすために、どう行動すればよいか論理的に考えることもプログラミング的思考の一つです。

まず、この場合において、自分が意図する一連の活動とは「温かい朝食を食べるための調理」となります。次に「温かい朝食を食べるための調理」をおおまかな行程に分解すると「1.トーストを作る」「2.目玉焼きを作る」「3.サラダを盛る」「4.オレンジジュースを注ぐ」となります。これが必要な動きの組み合わせです。さらに、一つ一つの動きを記号(調理手順)で表します。

1.トーストを作る

  1. 食パンを用意する
  2. トースターに入れて、スイッチを押す
  3. 焼き上がったら皿にのせる

2.目玉焼きを作る

  1. 卵を用意する
  2. フライパンを温める
  3. 卵を焼く
  4. 焼き上がったら皿にのせる

3.サラダを盛る

  1. トマトとレタスを用意する
  2. トマトを切る
  3. レタスをちぎる
  4. トマトとレタスを皿に盛る

4.オレンジジュースを注ぐ

  1. オレンジジュースを用意する
  2. コップを用意する
  3. オレンジジュースをコップに注ぐ

では、この手順に沿って朝食を作るとどうなるでしょうか。あなたが期待する温かい朝食は食べられるでしょうか。答えはノーです。温かいものを先に作ってから、サラダを盛り、オレンジジュースを注いだため、トーストと目玉焼きが冷めてしまいます。これでは失敗です。

プログラミング的思考では、調理手順の組み合わせをどのように改善すれば、より「温かい朝食を食べるための調理」に近づけるかを考えます。ただやみくもに試行錯誤するのではなく、間違っていたところを考え、改善することが大切です。頭の中で、シミュレーションしながら考えると、より効果的です。

では、必要な動きの組み合わせを「1.食材などを用意する」「2.トーストと目玉焼きを同時に作る」「3.待ち時間でサラダを盛り、オレンジジュースを注ぐ」とすればどうでしょうか。先ほどより「温かい朝食を食べるための調理」に近づきましたね。でも、まだ他にも改善できることがあるかもしれません。いろいろな組み合わせを考えてみましょう。

こうやって、あなたは温かい朝食を食べることができました・・・(おしまい)

このように「自分が意図する一連の活動を実現させるために、その手順の組み合わせを論理的に考えていく力がプログラミング的思考」です。

小学校プログラミング教育の手引(第一版)では「プログラミング的思考」について、コンピューターに自分が考える動作をさせる手順を例として紹介しています。また、具体的な例として、正多角形をかく場合について紹介しています。

コンピュータを動作させるための手順(例)

①コンピュータにどのような動きをさせたいのかという自らの意図を明確にする

②コンピュータにどのような動きをどのような順序でさせればよいのかを考える

③一つ一つの動きを対応する命令(記号)に置き換える

④これらの命令(記号)をどのように組み合わせれば自分が考える動作を実現できるかを考える

⑤その命令(記号)の組合せをどのように改善すれば自分が考える動作により近づいていくのかを試行錯誤しながら考える

※正多角形の例は小学校プログラミング教育の手引(第一版)をご覧ください。

小学校プログラミング教育の手引(第一版) (Page.11)

まとめ/プログラミング教育導入の目的

プログラミング教育とは「児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」であり「各教科等の特質に応じて、計画的に実施すること」と述べられていました。さらに、これらの学習活動は「プログラミング的思考を育むために行われるものであり、それによって学習の基盤となる資質・能力の一つである情報活用能力の育成を図る」とされています。

つまり、プログラミング教育導入の目的は「プログラミング的思考を育み、情報活用能力の育成を図る学習活動の一つであり、各教科等の特質に応じて、計画的に実施されるもの」と言えます。

次の記事「8-2.プログラミング教育のねらい」へ続きます。

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