子どもプログラミング喫茶
2019年5月4日・5日の2日間、Maker Faire Kyoto 2019が開催され、ワークショップのひとつとして「子どもプログラミング喫茶」が行われました。
「Maker Faire Kyoto 2019」とは
Maker Faire Kyoto 2019は、関西初となるMaker Faireで、2019年5月4日・5日の2日間、京都府のけいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)で開催されました。
Maker Faire Kyoto 2019は「つくることでたのしむ・まなぶ」をキーワードに、次のようなことを目的としています。
Maker Faire Kyoto(メイカーフェアキョウト)は、メイカームーブメントのお祭りです。ユニークな発想と誰でも使えるようになった新しいテクノロジーの力で、皆があっと驚くものや、これまでになかった便利なもの、ユニークなものを作り出す「メイカー(Maker)」が集い、展示と交流を行います。
多くの展示は、小さい子どもたちでも楽しめるもので、実際にものを作る体験ができるワークショップと合わせて、新しいツールを使ってものを作ることやプログラミングなどについて、楽しみながら学ぶことが可能です。
Maker Faire Kyoto 2019
国内外からユニークなものを作るメイカーが集まり、展示・交流を行うとともに、子供たちでも参加できるワークショップで「ものづくり」を楽しみながら学べるお祭りです。
会場内は、キッズ&エデュケーション・モビリティ・サイエンス・クラフト&デザイン・ミュージック・エレクトロニクス・ロボティクスなどのゾーンごとに展示が行われ、150を超えるメイカーの作品を見たり、実際に触れたりすることができます。
micro:bitを使った作品の展示や関連商品を販売していたブースをいくつか紹介します。
自動組紐製造器
MakeLunaさんの自動組紐製造器です。2018年に開催された「micro:bitで作ってみようコンテスト」で特別賞を受賞した作品で、さらに液晶表示器を搭載して、組み方の選択やアームの微調整ができるように改良されていました。
micro:bitで制御されたアームが、紐を組み上げていくようすは見ていて飽きません。好きな配色と組み方を選んで作るオリジナル組紐ストラップの実演販売を行っていました。
micro:bitを使ったCNC風マシン(改良版)
kuralab@大阪電気通信大学(ゲーム&メディア学科ヴィジュアルデザイン研究室)さんのmicro:bitを使ったCNC風マシン(改良版)です。2個のモーターを制御することで、ペン先を2軸(縦方向・横方向)に動かし、紙に新元号「令和」を書いていました。
micro:bit+Scratchで作る体験型ミニゲーム
京都橘中学高等学校ロボットプログラミング部の生徒が作ったScratchとmicro:bitを組み合わせたゲームです。ゲーム画面が大きなスクリーンに投影され、子供たちがmicro:bitを傾けながら夢中になって遊んでいました。
コンサートで使えるIoTペンライト
えれくら!さんのブースに展示されていたのは「みんなのラズパイコンテスト2018」で、IoT ALGYAN賞を受賞した「コンサート会場で使えるIoTペンライト(備中絡繰製造所)」です。システム構成の中心はラズパイですが、ラズパイとペンライトの無線通信にmicro:bitを使っているようです。
続いてスポンサーゾーンです。
TFabWorks
micro:bitの拡張ボードを得意とするTFabWorksです。ブースでは各種拡張ボードの販売と、60度で何度も柔らかくなる手びねりプラスチックの体験コーナーがありました。社員のみなさんが着けているエプロンには、さりげなくmicro:bitが動いていました。
株式会社スイッチサイエンス
さまざまな電子工作モジュールを自社で設計・製造、または国内外から調達・販売する株式会社スイッチサイエンスです。子供たちがmicro:bitを使った射的ゲーム「Shoot!Shoot!Shoot!」を楽しんでいました。銃と的の両方にmicro:bitを使い、赤外線でヒットを判定しています。5発の弾を撃ち終えると、銃を上に向けてリロードするギミックも最高!
共立電子産業株式会社
Electronic Devices,Parts,Kits & Robotsを中心にものづくりをサポートする共立電子産業株式会社です。micro:bitのユーフォニアム型ケースやレゴクリエイターダイナソーと組み合わせるサーボ&ボイスコントロール基板などを販売していました。
子どもプログラミング喫茶とは
メイカーによる作品展示の他に、体験したり参加できるワークショップが用意されているのもMaker Faireの魅力です。その中のひとつが「子どもプログラミング喫茶」です。
「子どもプログラミング喫茶」は、2016年の東京会場から開催されているもので「Maker Faireを訪れた子供たちが手軽にプログラミングを体験できるように、メニューから気になるものを選んで注文するスタイルのワークショップ」です。Maker Faire Kyoto 2019では、若林健一さん(@kwaka1208)の呼びかけで全国から集まった有志によって運営されました。
メニューの内容は、店員(チームスタッフ)による持ち込みで、今回はmicro:bit・Scratch・Scratch+micro:bit・Unity・Processingが用意されました。体験時間が15分~20分程度と比較的短く設定されていましたが、プログラミング体験を単純なコピペで終わらせるのではなく、子どもたちへ何を伝えたいか、何を感じ取って欲しいかを考えながら作られたメニューは、とても素晴らしい内容となっていました。メニューの一覧は「子どもプログラミング喫茶【メニュー】」でご覧頂けます。
当日のようす
公式ブログによると、初日(5/4)の開場直前には入口に200人~300人ほどの行列ができていたようです。12時の開場と共に来場者が流れ込み、入口近くの一等地にブースを構えていた「子どもプログラミング喫茶」も、あっという間に5卓のテーブルが満席となりました。
プログラミングを体験する子どもが席に着き、お父さん・お母さんが後ろで見守る中、店員の説明に耳を傾け、一生懸命マウスを操作する姿が印象的でした。
メニューの中には、プログラミングが画面の中だけでは終わらず「ロボットが走る!ダンスする!紙コップが回る!豆電球が点滅する!箱を開けると音が鳴る!」といった物理的な動きにつながるものが多くありました。短時間でプログラミングを理解することは難しいかもしれませんが、その結果ロボットが動いたという事実は記憶に強く刻まれたのではないでしょうか。
「難しい」と言いながらも、根気よくプログラミングにチャレンジしていた子どもが、ボタンを押してロボットが動いた瞬間、笑顔になるのを見ると本当に嬉しいものです。まさに「将来のメイカーここにあり」です。
2日間での体験者数はおよそ170名。満席の状態がずっと続くと言ういい意味で予想を裏切られた2日間でした。170名にプログラミングの体験を届けられた反面、満席だったため体験をあきらめた子ども(家族)がいたことは、そのやりたい気持ちに応えられなかったという点で反省すべきことです。これは、我々スタッフの今後の課題です。
体験した子供たちの反応
子どもたちには、プログラミング体験の終了後、思ったことを紙に書いて壁に貼ってもらいました。「たのしかった」「おもしろかった」「むずかしかった」などの感想が多く、中にはカムロボやパソコンの絵を描いてくれた子どももいました。
- すごく楽しかったです。パソコンを使ってプログラミングすると、機械が動くのがいいなと思いました。
- とてもていねいに教えてもらいました。
- パソコンとれんどうする体験ができて良かったと思います。
- マイクロビットをもっていたのでなれていたけどどうせんをつなぐことをはじめてしたので楽しかったです。またやりたいです。
- はじめてパソコンをつかって音がなるようにできて楽しかったです。
- 前に学校でやったやつより楽しかった。
- コーンをよけて進むのがむずかしかったです。けっこう失敗したけどやれてよかったです。
- パソコンでパチパチするのが、たのしかったです。あと、きれいな音が出てうれしかったです。
- トラブルがあったけど楽しかった!
- ロボットについて深く知れたが操作はむずかしかったので次は頑張ってこれから生かしていきたいです。ありがとうございます。
- 「カタカナで書けるなんてすごい」と思いました。
- 機械やロボットはもともと好きだったけどこの体験をしてもっと好きになった。
- めいれいどおりにうごくっていうのがすごかった。
- いえでもやりたいぐらいです。
- 名刺作り楽しかったです!!いっぱい教えてくれてありがとうございました!
多くの子供たちが、このプログラミング体験を通して「むずかしい」から「楽しかった」「またやりたい」へ気持ちが変化していることがわかりました。これは本当に嬉しいことです。2日間の日程終了後、壁に貼られた感想を見ながら胸を熱くしていたのは私だけではないはずです。
保護者の反応
やはり2020年度からのプログラミング教育必修化を意識して来場される保護者は多かったです。子どもがプログラミング体験するようすを後ろから見て「親の私が理解しました」とか「子どもがプログラミングに興味があることを今日初めて知りました」と驚く保護者もいらっしゃいました。
2日間を通して、いろいろな質問を保護者から受けました。「子どもがプログラミングに興味があるが、(情報がありすぎて)何を準備すればいいのか全くわからない」「どこへ行けばプログラミングの勉強ができるのか(情報が無くて)わからない」「親世代がプログラミング教育受けていないのでこれからが心配」など。情報を発信する立場として、これから考えていかなければならない課題を頂きました。
店員(チームスタッフ)
Maker Faire Kyoto 2019の「子どもプログラミング喫茶」は、店長の若林健一さん(@kwaka1208)と、その呼びかけで全国から集まった有志のボランティアで運営されました。当日、初顔合わせのメンバーが多かったのですが、志が同じ方向を向いていると、こんなにもすんなりチームとして機能するのかと驚くほどでした。この連帯感がなければ、170名の子どもたちプログラミングの体験を届けることはできなかったでしょう。
私自身、2日間を通して貴重な体験をすることができました。皆さまに感謝します。ありがとうございました。
当日のようすは若林さんが「Maker Faire Kyoto 2019 子どもプログラミング喫茶開催しました!」としてさらに詳しくレポートされています。こちらもぜひお読みください。
また、サヌキテックネットが店員用の資料として準備したものを以下に掲載します。参考にしてください。
リーフレット「micro:bitを観察しよう!」
「micro:bitを観察しよう!」は、micro:bitを紹介したA4サイズのリーフレットです。実物と見比べながら、表面・裏面に配置された部品の名称と機能を確認することができます。
リーフレット「micro:bitでプログラミングしよう!」
「micro:bitでプログラミングしよう!」は、プログラミングの手順を紹介したA4サイズのリーフレットです。
メニュー「カッコいい名札を作ろう!」
micro:bitのLED画面を使って、電光掲示板のように、繰り返し、自分の名前(カタカナ)が表示されるカッコいい名札をつくろう!
メニュー「部屋の明るさをみる!」
あらかじめmicro:bitに搭載されている明るさセンサーを使って、繰り返し、部屋の明るさ(光の強さ)を測定して、LED画面に表示しよう!明るさがどんなふうに見えるかな?
メニュー「動きに合わせて音を鳴らそう!」
micro:bitには、向きや動作を知るための「加速度センサー」があらかじめ搭載されているよ。向きや動作に合わせて、いろいろな音を鳴らしてみよう!
メニュー「暗くなったら明かりをつけよう!」
暗くなったら豆電球の明かりをつける動作を、micro:bitで自動化したい。そのためには、繰り返し、明るさセンサーで光の強さを調べて、暗いときは「プログラム制御スイッチ」をオン、明るいときはオフにするといいね。
メニュー「無線でロボットを操縦しよう!」
micro:bitの無線機能を使って、離れた場所のロボットを操縦するよ。ボタンAを押したとき・ボタンBを押したとき・ボタンAとBを一緒に押したときのそれぞれに、ロボットの動作を割り当てよう!
メニュー「ネコリンピックでプログラミング体験!」
Scratch 3.0とmicro:bitを接続することで、仮想空間と現実世界が融合したプロジェクトを作ることができます。ネコリンピックで、そのプログラミングを体験してみましょう。
この「ネコリンピック」は、下村さん(ネコマ製作所)が開発する「Scratch3.0とmicro:bitの組合せでスポーツ的なゲームをやってみようというプロジェクト」です。