教材とmicro:bitでできること
小学校で学習する「電気」に関する教材とmicro:bitを組み合わせてできることを紹介します。
8-6-1.前回のおさらい
前回の記事「8-5.小学校で学ぶ電気とmicro:bit」の中で、小学校で学習する「電気」について、第3学年「電気の通り道」・第4学年「電流の働き」・第5学年「電流がつくる磁力」・第6学年「電気の利用」という単元で学ぶことを紹介しました。
この4年間で「電気をつくる・ためる・つかう」ことを学習して、発電によってつくられた電気が、光・音・熱・磁力・運動などに変換されて利用されることを体験的に学びます。
しかしながら、今日では、身の回りの電気製品をはじめ多くのものにコンピューターが内蔵されています。電気を光・音・熱・磁力・運動などに変えて利用するだけでなく、コンピューターによって、より高度に、より複雑に制御することで、私たちの生活はさらに便利で豊かなもの、かつ安心・安全なものになっています。
小学校におけるプログラミング教育のねらいのひとつに「論理的思考力を育むとともに、プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付き、身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むこと」があります。
子ども達が、身の回りの物にコンピューターが内蔵され、そのコンピューターに人が適切な命令をあらかじめ与えることによって、使う人が求める動きになることに気づくにはどうすればいいでしょうか。
この気づきのきっかけを与えるために、小学校へ導入されている教材を使って「電気をつくる・ためる・つかう」に「プログラムで制御する」を加えて体験的に学ぶことができるなら素晴らしいことではないでしょうか。それを可能にするのが、教育用として開発された小型のコンピューターボードであるmicro:bit(マイクロビット)なのです。
8-6-2.小学校で学習する「電気」に関する教材
小学校の授業では「学習内容に対する子ども達の興味や関心を高め、実際に触れて理解を深めること」を目的として、さまざまな「教材」が使われます。小学校で学習する「電気」に関する教材をいくつか見てみましょう。
小学校で学習する「電気」に関する教材
図8-6-2-1は、第4学年で使用する教材です。この教材では、乾電池の本数やつなぎ方(直列つなぎ・並列つなぎ)を変えて、豆電球の明るさやプロペラ付きモーターの回り方が変化することを調べます。竹とんぼのようにプロペラを飛ばしたり、モーターカーを作るなど楽しみながら学べる工夫があります。
図8-6-2-2は、第6学年で使用する教材です。この教材では、手回し発電機でつくった電気をコンデンサーにためて、豆電球・モーター・ブザーなどで利用します。豆電球と発光ダイオードの点灯時間を比べて、電気の有効利用を考えます。
子ども達は、このような教材を使い、4年間で「電気をつくる・ためる・つかう」ことを学習します。では、次に「電気をつくる・ためる・つかう」に「プログラムで制御する」を加えて体験的に学ぶために、教材とmicro:bitを組み合わせてできることを見てみましょう。
8-6-3.教材とmicro:bitを組み合わせる
「8-4.micro:bitをすすめる理由」の中で、micro:bitを小学校におけるプログラミング教育に採り入れる魅力として「micro:bitを使えば、プログラミングによって、現実世界のものを動かすことができる」ということ、そして「そのために必要なセンサーが、あらかじめ搭載されている」という二点を紹介しました。
では、教材とmicro:bitを組み合わせると何ができるのでしょうか。先ほど紹介した教材とmicro:bitを組み合わせてできることを具体的に見てみましょう。
教材と組み合わせるmicro:bitについて
図8-6-3-1は、教材と組み合わせるmicro:bitの基本セットです。むき出しになっているmicro:bitの基板を保護するために、micro:bit本体をアクリルケースに収めています。スイッチ付き電池ボックスを接続することで、micro:bitを持ち運んで使用することができます。単三形乾電池を2本使用します。緑色の装置は「プログラム制御スイッチ」と呼ばれ、教材とmicro:bitを組み合わせるのに欠かせないものです。この記事の中では、この基本セットと教材を組み合わせます。
- micro:bit本体
- アクリルケース(保護ケース)
- スイッチ付き電池ボックス、単三形乾電池×2本
- プログラム制御スイッチ(緑色の装置)
どうやって教材と組み合わせるのか
このmicro:bitの基本セットは、電気の通り道である回路を繋いだり、切ったりするスイッチと同じ働きをします。なので、教材のスイッチの部分を、この基本セットに置き換えるだけで、プログラムで制御できる教材になります。
豆電球を制御する
図8-6-3-3は、豆電球の回路にmicro:bitを組み合わせたものです。このように組み合わせることで、豆電球の点灯・消灯をプログラムで制御できるようになります。また、直列つなぎでは乾電池の本数が変わると、豆電球の明るさが変化することを学習しますが、乾電池の本数を変えずにプログラムだけで明るさを変化させる体験ができます。
さらに、micro:bitにあらかじめ搭載されている「明るさセンサー」を使うことで、周りが暗くなったら豆電球を点灯させるといった体験ができます。この体験によって、街路灯や自動車のヘッドライトが夜間に自動点灯するといったことが連想できます。
プロペラ付きモーターを制御する
図8-6-3-4は、プロペラ付きモーターの回路にmicro:bitを組み合わせたものです。このように組み合わせることで、プロペラ付きモーターの回転・停止をプログラムで制御できるようになります。また、直列つなぎでは乾電池の本数が変わると、プロペラ付きモーターの回転速度が変化することを学習しますが、乾電池の本数を変えずにプログラムだけで回転速度を変化させる体験ができます。
さらに、micro:bitにあらかじめ搭載されている「温度センサー」を使うことで、周りの温度によってプロペラ付きモーターの回転速度を変化させる体験ができます。この体験によって、扇風機やエアコンの風量が温度によって自動的に変化するといったことが連想できます。
ためた電気をさらに有効につかう
図8-6-3-5は、手回し発電機でコンデンサーにためた電気を、豆電球(または発光ダイオード)でつかう回路にmicro:bitを組み合わせたものです。コンデンサーにためた電気で、豆電球と発光ダイオードをそれぞれ点灯させて、その点灯時間を比較することで、電気の有効利用について学習します。
micro:bitを組み合わせることで、夜間だけ点灯させたり、ボタンを押した時に1分間だけ点灯するといったように、ためた電気をさらに有効につかうことを考えるきっかけになります。
8-6-4.最後に
このように、回路のスイッチをmicro:bitに置き換えるだけで、豆電球やプロペラ付きモーターなどがプログラムによって制御できるようになります。では、肝心のプログラミングはどうなっているのでしょうか。簡単に教材とmicro:bitを組み合わせることができても、プログラミングのハードルが高ければ、そもそも小学校におけるプログラミング教育には相応しくありません。
図8-6-4-1は、暗くなったら豆電球を点灯するプログラムの例です。micro:bitでは、このようにブロックをならべてプログラミングを行います。一連の操作は、容易に習得することができるので、プログラミングそのものに無駄な時間をかけるのではなく、豆電球を点灯させたりプロペラ付きモーターを回転させるといった本来の目的に考える力を注ぐことができます。